マンション・アパート経営をしている方の法人化のメリット
こんにちは。 経営の最適化をサポートしています。岐阜市の税理士 藤原 孝将です。
今回はマンション・アパート経営についてです。
基本的にアパート・マンション経営を個人事業として行っているかたも、アパート・マンション経営を法人化して、法人で行っている人も、基本的な税金の算出方法は、同じです。
つまり、不動産収入ー不動産経営にかかる諸経費=利益 となり、この利益に対して課税されるという考え方は法人であっても個人事業であっても同じということです。
いやいや同じではないでしょう、不動産経営を法人で行うと節税につながるという話を聞いたことがあるという人もいるかもしれません。
そうなんです、実は法人で行う場合と、個人事業で不動産経営を行う場合とでは節税という観点では大きく違ってきます。ただし、節税という観点以外もあわせてメリット・デメリットを考えないと痛い目にあうかもしれないので注意が必要です。ではマンション・アパート経営を行う上でのメリット・デメリットを6つにまとめましたので順次みてまいりましょう。
1.法人のほうが経費することができる支出の範囲が広いです。
会社を設立し、法人として経営する場合と個人事業者として経営する場合とで大きく違ってくるのは何といっても経費の範囲です。
①法人経営の場合は役員報酬として自分自身へ給与を支払うことができます。
②役員の在任年数、報酬額に応じた退職金を経費として支払うことができます。
③退職金準備や不測の事態、経営悪化の対策など将来の不安への対処として生命保険や倒産防止共済などを活用し、経費とすることができます。
④法人名義の携帯代や法人名義の車両維持費など経費を有効に活用することができます。
2.法人のほうが税率が低くなる場合があります。
個人事業の場合(所得税)の税率は次の通りです。
課税所得金額 | 所得税率 | +住民税 | 控除額 |
195万円以下 | 5% | +10% | 0円 |
195~330万円以下 | 10% | +10% | 97,500円 |
330~695万円以下 | 20% | +10% | 427,500円 |
695~900万円以下 | 23% | +10% | 636,000円 |
900~1800万円以下 | 33% | +10% | 1,536,000円 |
1800~4000万円以下 | 40% | +10% | 2,796,000円 |
4000万円超 | 45% | +10% | 4,796,000円 |
※復興特別所得税は含めていません。
一方で、法人の場合(法人税等)の税率は次の通りとなります。
課税所得金額 | 法人実効税率 | +均等割 | |
400万円以下 | 約21% | +均等割 約7万円 | |
400~800万円 | 約23% | +均等割 約7万円 | |
800万円超 | 約35% | +均等割 約7万円 |
このように、個人事業の所得に適用される所得税の税率と法人の所得に適用される法人税率とでは差があります。
所得税の場合は課税所得金額が330万円以下であれば適用される所得税率と住民税率を合わせると20%となります。(復興特別所得税を除きます。)
ところが、課税所得金額が330万円を超えると所得金額と住民税をあわせると30%となり、695万円を超えるとさらに増え30%・・・とどんどん税率が高くなり、最高で55%ということになってしまいます。
一方で法人税率はどうかというと、課税所得が800万円以下までなら23%程度+均等割約7万円、800万円を超えても税率は変わることなく約35%ということです。
また法人税率に関して言うと、超えた分に対してだけ該当する税率が課せられるのに対し、所得税はいったん超えると、全体が該当する税率が適用されます。そのため課税所得が800万円程度になってくる場合には法人化を検討したほうがよいと思われます。
また、個人事業と申しましたが、所得税の場合は、他の所得、例えば給与があれば給与も合算して課税所得金額を計算しますので、不動産所得のほかに給与所得などがある場合には合算した金額がどの税率に適用されるかを検討する必要があるので注意が必要です。
3.事業承継としての法人の活用
法人(資産管理会社)の株式をお子さんに譲渡、贈与することで不動産を共有分割をするなど不動産を承継するよりもスムーズに事業を承継することができます。
4.欠損金の活用
法人の場合、赤字を出した場合には、その翌年度以降の利益と相殺させることができます。その相殺できる期間は最大で9年まで繰り越すことができます。
いっぽうで個人の場合には3年しか繰り越すことができません。
法人のデメリット
1.申告書の作成が複雑です。
法人税の申告書は個人の申告書(確定申告)に比べて、かなり複雑です。税理士に依頼するのが一般的になります。
2.社会保険に加入しなければなりません。
法人の場合は従業員が1人であっても、政府管掌の社会保険に強制加入することになります。社会保険に加入し、厚生年金をかけることができれば、将来の年金につながるため、一概にその保険料負担がデメリットになるわけではありません。役員の給料の設定金額や家族構成によっては、むしろ社会保険に加入したほうが有利になることもあります。ただ毎年の月額算定基礎届など事務的な負担が増えることになります。
3.設立時に費用がかかります。
個人事業の設立は登記が不要ですが、法人の場合は登記が必要になります。そのため、登記費用がかかります。